日向月光館

日々徒然。恵陽の日常と本館零れネタ。
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王様界隈

ツイッターの方で交流してたら何故か書くことになったお話。
時間切れなので途中まで。はっきり言って書ける気がしない。





 最後に拭ったあいつの涙は、あんなにも熱かったのに。今はひどく冷たい身体。俺が欲しかったのは、こんなモノじゃなかった。
 ただ、染み入るような、あの手のぬくもりに触れていたかっただけなのに――。


 慧陽王という名は知っていた。隣国を治める名君だという噂だ。いつも皆がその名を引き合いにだしてくるので耳にたこができるほど覚えてしまった。
「なんだよ、なんだよ。もう散々聞いたからいいよ。あいつの話は聞きたくない」
 小言をいわれ続けて十四年。もう聞き飽きた。というか憎さすら感じる。
「そうはいっても、やはり見習うべきところが多いのですよ。是非我が王にもよいところは取り入れていただきたいのです」
「わかってる。それは何度も聞いたよ」
 側近の言うことに僕は溜息を吐く。
 十二の歳で位について早二年。慣れないながらも何とか側近たちと二人三脚でやってきた。だが国を治めるには言われるままにやっていけばいいのではない。我儘な要望はあるし、後手に回っては責められる。
「とりあえず、縁を結んでおくことに悪い事はありません。謁見を申し込んで参りました。色々御教授願って下さいね」
「ええ!」
 露骨に嫌な顔をした主にも側近たちは容赦がなかった。


 半ば無理矢理の謁見は切なくなるほど心細かった。護衛の二人と共に隣国入りを果たしたが、謁見の間には僕独りだ。ただ虚勢を張ることだけは二年の間にうまくなっていた。それは一番最初に学んだことだ。
 それでも内心の緊張は半端ではない。
 謁見の間の扉が開かれ、僕は一寸目を閉じる。深呼吸をして視界を開く。そして足を踏み出した。
「お初にお目にかかります、慧陽王」
「面をあげよ」
 声は思ったより高い。顔をあげると、そこにあるは漆黒の髪の男。まだ二十代と聞いている。若い。
「ほう、若いな。まだ十五ほどだと聞いたがまことか?」
「はい。十四になりました」
「そうか」
 ふ、と笑みを零す。中性的な雰囲気を持った彼は笑うと少し幼くなる。それが嫌な笑い方ではなかったが、僕はどこか馬鹿にされたように感じてしまった。
「陛下、御挨拶が遅れて申し訳ありません。此の度は謁見賜りましてありがとうございます」
「そう固くなるな。君のような若い王がいると私も頑張らないとと思える。共に支えあえる国となろう」
 彼は言う。
 それだけで、僕は負けた気分になる。僕は彼の真似をしにきたのに。技を盗みに来たのに。そんな朗らかに言われては、はいとしか返せない。
 それから時間をいくらか慧陽王はとってくれた。
 慧陽王という人物は何においても僕の上をいった。しかも完ぺき主義者かというほど何でもこなしてみせる。
 僕より長く生きている。それもあるのはわかるがそれだけではないだろう。波じゃない努力をしてきたことを察せられた。
 しかし乗馬でも、剣でも、政の議題でも、果てはカードゲームでも負けるとなると自分の能力のなさに泣けてくる。
「君はまだこれからだよ」
 そう言って慰められると余計に哀しくなった。
「君はまだ若い。私よりももっと。そしてその歳で王座に就いた。それは誇っていいことだよ」
 彼は穏やかに微笑んで言った。

 二回目三回目に謁見を賜った時にもやはり勝てなかった。
「君は私に勝ちたいのかい」
「ええ、俺は貴方に勝ちたいのです」
 いつしか俺は自分を俺と呼んでいた。もっと早く成長したいという表れだったのかもしれない。
「だが今日も私の勝ちだね」
 俺の剣が綺麗に円を描いて飛んでいった。荒い息を吐きながら、俺は静かに目を閉じた。
「でも毎年強くなっている。もうすぐ私を抜かしてしまうね」
「そうなれば嬉しいですけど」
 握手をすべく差し出された手をとった。と、俺はバランスを崩して彼の手を握ったまま引いてしまう。彼はわあ、と言いながら俺の方に倒れてきた。
 支えようとした。けれど――俺は彼を突き飛ばしてしまった。
「こらこら、女性にはやさしくするものだよ。いくら私が君より強いとはいってもね」
「……女王だったんですか」
 彼――いや、彼女は目を瞬かせるとクスクスとさざめき始めた。
 知らなかった。俺はずっと慧陽王は男だと思っていた。そうだ、王様は男のものだと思っていたから。俺の国では違う、女は継承権を持たないから。
 カッと頬が熱くなる。
「すみません、そのお手を……」
 ぎこちない仕草で手を差し出すと、彼女はにっこりと微笑んだ。もうその顔は男には見えなかった。
「枯陰王」
「は、はい」
「私は女であるとも男であるとも言わなかったから、君が間違えても仕方ない。ややこしくてすまないね」
「い、いえ……」
 謝られると余計に申し訳なくなる。彷徨う視線がどうしようもない。だが彼女は至極真面目に話を続ける。
「我が国でも王位継承は通常男子にある。ただ前王の子は私だけで、叔父たちに譲りたくなかったのだ。私が無理矢理奪ったのさ。今はだいぶ落ち着いているが、やはり当時は凄まじい反発にあったものだよ」
 滔々と語る彼女の言葉には淀みがなく、俺はただただ頭が下がる思いであった。こんな人に勝てないと思った。





時間ぎれっすー。
慧陽王と枯陰王。本当は恵陽王といわれたのですがさすがに恥ずかしかったので漢字を一部変えました。

このあと甘酸っぱい展開と苦い展開があるんだと思われます。さすがに無理だった。
冒頭の数行だけはもこもさんの文章をそのまま使っております。
誰か続き書いてー

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