日向月光館

日々徒然。恵陽の日常と本館零れネタ。
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お題バトル

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お題は以下
呪文 魔女 故障 ロケット サイダー 椅子 酒 きょうだい喧嘩
から三つ以上ということで「魔女」「ロケット」「サイダー」「酒」「きょうだい喧嘩」を使用しました。

では本文は以下から。

『魔女のご機嫌』



「ちょっと聞いてちょうだい!」
 あたしは荒くも激しい息を吐き出した。カウンターの上にドンとグラスを置く。
「はいはい。聞いてますよ」
 軽い口調で返すのは魔女協会の営業事務であるナルだ。空になったグラスを見て、すぐに次の分を注ぎ足す。なみなみに注がれたグラスを呷ってあたしは吠える。
「サイダーで酔えるか!」
「あんた酔わすと面倒なんだもん。それより何さ、毎度あんたたちも飽きないよねえ」
「仕方ないじゃない」
 思い出しても腹が立つ。事件は夕方に起きた。あたしはいつものように任務を終えて帰ってきた。お客さんは喜んでくれたし、気分は上々で、そして何よりいつもはすぐに売り切れてしまうケーキも買うことができた。確か桃の紅茶が残っていたはずだと思いながら、足取り軽く帰宅したのだ。
「それなのによ……あの馬鹿弟め」
 帰宅したあたしを待ち受けていたのは荒らされた家だった。泥棒かと青ざめるあたしのすぐ後ろから、あろうことか弟――メンは姿を現したのだ。とてものんきな声付きで。
「なんていったと思うのあいつ! 『ソーちゃんは仕事熱心だねえ。ちょっと探し物させてもらったよ』って、とっちらかしたまま帰りやがったのよ」
 今でも腸が煮えくり返りそうである。すぐに胸倉掴んで投げ飛ばしたが、それだけでは怒りはおさまらなかった。ただ、部屋を片付けろと言ってもこの様子では何故あたしが怒っているか理由すらわかっていないだろう。
「まあ、あの弟ならね」
 ずぼらで自由人として有名な弟は、変人として街に名を馳せている。あたしにも実は把握できてないところは多い。とりあえず空を見るのが好きで、お酒は飲めない体質だというのはわかっている。その部分だけはあたしと同じだからだ。
 幼いころはよく並んで空を見上げていた。その頃は単なるのんびりやさんくらいにしか思っていなかったのだ。ちなみに酒は両親に飲まされて二人そろって一杯で床に沈んだ。
 だから魔女になるべく魔女寮に入って家を離れた数年間で、随分驚かされてしまった。
「ところで何を探しにきたの?」
「ああ、えっと本だったみたい。一応見つかったみたいだけど、家中荒らさなくてもいいと思わない?」
「それが弟くんでしょ。でも魔女の家って一般的には不思議なものがいっぱいあるからねー。もしかして気になって触って色んな反応起こさせちゃったんじゃないの? 危険なものは置いてなかった?」
 ナルが首を傾げる。そう言われれば、確かに任務の薬を製造するためにビーカーや薬品を広げたままにしていた。もしかしてあたし自身のせいもあったんだろうか。
 そう思うとメンに申し訳ないなと少しだけ思う。
「でも、普通はそれでもぐちゃぐちゃにはならないわね」
「そ、そうでしょ!」
 うっかり帰ったら弟に謝ろうと思うところまで思考が進んでいた。
「あいつが謝るまで口聞いてあげないんだから」
 我ながら子どもっぽいとは思うけれど、こうでもしなければメンはわかってくれないのだ。何だか無性に腹が立ってくる。
「まあ、でもさ謝ってきたらちゃんと許してあげるんでしょう?」
「それは、まあ……ちゃんとわかって言ってきたらね」
 のんびりやなあの弟は一週間後に気づくとかもざらなのだ。それでも許してしまうのはあたしが弟を大好きだからだとわかっている。のろまでずぼらな弟だけど、のんびりやでやさしく笑う弟だ。愛すべき弟なのだ。
「じゃあさ、ほら」
 不意にナルがにやりと口の端を持ち上げる。そしてあたしの肩を叩いて背後を示す。
「え?」
 怪訝な顔で振り返れば、そこには小さくなったメンの姿があった。
「ソーちゃん」
 耳が垂れた犬のようにも見えて、それだけでほだされそうになる。だけどあたしはぐっと堪えて胸を張った。
「なに? 何の用?」
 精いっぱい不機嫌な声を出す。メンの顔は眉がハの字になっていて、情けない。
「あの、その、さっきはごめんね」
 あたふたと言いつのりながらあたしの手を強く握る。
「いつもは触らないようにしてるんだけど。虹色の水があったんだ。すごく気になってつい蓋を開けちゃったんだよ。ごめん。……僕、もう許してもらえない?」
 ああ、とため息を吐く。虹色の水は確かにあった。置き忘れたのはあたしのミスだった。瓶に移すには魔法を使わなくてはいけなくて、けれど疲れていて忘れてしまったのだ。
 メンは今にも泣きそうな顔になってしまっている。どうしようかと考えていると、弟はポケットから何かを取り出した。
「こ、これ!」
 手の中に握らされて、開いてみる。キラキラと光るロケットのキーホルダーがあった。
「露店で見つけて、ソーちゃんにはちょっと幼いかもしれないと思ったけど、でも、でもね。それを持ってるソーちゃんはとってもかわいいと思うんだ。仲直りしよう」
 確かに安物と言われてしまえば終わりだが、キラキラと光を反射して眩くなる。空の星に向かうロケットだけど今はメンからあたしに向かってきている。あたしは何だか笑いがこみあげてきた。
「いいわよ、仲直り」
「本当!」
 あたしの手をぶんぶんと振るメンにいつの間にか機嫌は直ってしまっていた。
 離れたところから、全く傍迷惑な姉弟ね、とナルの声が聞こえた気がした。


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