日向月光館

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覆面作家企画6 後書きテンプレート

さてさて、皆さまいかがだったでしょうか?
覆面作家企画6の回答が出ましたのでテンプレ置きにきました。
そしてごめんなさい。色々本当ごめんなさい。登場人物で混乱させてしまった。
とりあえず後書きテンプレ+αで続きからどうぞ!
長いのでご勘弁を!



「吉信優真の事情」

 僕の話をしよう。
 平々凡々中流家庭。サラリーマンの父とパート兼主婦の母を親に持つ僕は、その家の三男として生まれた。姓は吉信、名は優真という。
 兄二人との関係は実に良好だし、弟として甘えられる関係もやぶさかではない。ただ、僕には秘密がある。
 それを家族に話すことはない。話したところで意味がない。これはただ、僕の後悔の話なのだから。だけど今、君には語ろうと思う。後悔が歓喜へと変わった今ならば、話してもいいと思う。

 僕の秘密、それは幽霊やお化けが見えるということだ。
 物心ついた時から見えていたその類を、僕は初めから生きていないと知っていた。
 通学途中の電信柱の傍に立つ母親と子どもも、浜辺で会った遠くを眺める海軍士官も、ビルの屋上にある遊び場で柵を何度も乗り越える青年も、誰も生きてはいなかった。
 僕はそれらを見ていながら接触はしなかった。僕にはどうしようもないのだ。関係もない。未練があったとしても叶えることは難しいと思われた。

 僕の秘密、それは生まれる前の記憶があること。
 つまりは前世だ。こういう話をすると頭がおかしいと思われるかもしれない。けれど本当なんだ。幽霊が見える力を僕は前世でも持っていた。もしかしたらだから、記憶をもって生まれてこれたのかもしれない。
 前世での僕は辰三といった。多分変な死に方はしていない。ただ心残りがあったんだ。本当はちょっとしたおせっかいを焼いてやろうと思っていた。それなのに事態は思わぬ方向へ転がって、どうしようもなくなってしまった。
 それは江戸の大火事のことだった。喧嘩と火事の江戸の華、なんていうけれど実際はとんでもない。煙でいぶされるのは苦しいし、逃げるにも人が多すぎて圧死しそうだし、散々だった。おかげで今世で火の取り扱いだけはいつもきちんとしている。

 僕の後悔はこの時から続いている。あの時の火事で死人が出た。少なくない数だ。
 火事の跡、現場へ行くと逃げ切れなかった人たちがさまよっていた。熱い熱いとうわごとのように口にして、幼い少女などは泣きながら母と父を呼んでいた。そこへ現れたのが藤吉だった。
 彼の姿を見て幼い少女が近寄って行った。それで子を亡くしたのだと知った。
 藤吉には娘の姿が見えない。娘は見えているけれど話しかけられない。だからどうにかしてお互いに綺麗なお別れをさせてやろうと思ったんだ。だけど、不用意な一言でそれは出来なくなった。
「放火かもしれないって言われている」
 僕はそう状況を伝えた。これは嘘ではなかったし、その犯人捜しをやらないかと持ちかける予定だったのだ。そして犯人を捕らえてめでたしめでたしで藤吉は恨みを晴らし、娘は安堵してあの世へと送ってやろうとした。もし犯人が居ない火事だったとしても、娘が居るこの界隈に何度もくることで接触を計ろうとした。
 だが、駄目だった。
 藤吉は確かに動き出したが予想以上に早く、犯人を見つけた。まさか僕は本当に見つけてしまうとは思わず、また気づいた時には終わってしまっていた。彼は殺人の罪でひっ捕らえられた。瓦版に手を血で染めた男の絵が描かれていた。
 頭を金槌で殴られたような衝撃を受けた。
 それだけ彼は希い、また沈んでいたのだ。それに気付けなかった。
 そして僕には娘の姿が見えていた。ひっ捕らえられる父の姿を捜して彷徨う幼い少女。見えないのだとわかった。見ることは叶わないのだ。藤吉はもう手を赤く染めてしまったから、清らかな魂は汚れたものを映すことは出来なかった。
 僕はその後、少女を見ることは出来なかった。その界隈から逃げたからだ。僕の一言がなければ藤吉は一角の簪職人として腕を振るっていただろう。もしかしたら再婚してまた娘をもうけていたかもしれない。
 そう考えると恐ろしかった。
 けれど、今世で僕は見てしまった。大学の体験入学に向かった時だ。煤けた着物に、父を呼ぶいといけない声。心臓が止まるかと思った。
 そこに娘は居た。娘は僕を見つけると、少しほっとしたようにして口を開いた。自分の父を知らないか。自分はお紺というのだ。あなたはいつか助けようとしてくれた人だね。と、そう言った。確かに言った。
 恐怖と同時に僕は、チャンスだと思った。僕が生まれる前から持ってきてしまった後悔を捨てられる機会だと。だからこの大学を受験して、藤吉を捜そうと思った。
 
 大学のあった場所はあの火事の現場だった。藤吉が生まれ変わっているかはわからなかった。ただもし娘と同じように魂の存在であったなら僕が架け橋となればいいのだろうと思っていた。
 結論からいうと、彼は生まれ変わっていた。
 お紺がある人物の前で何かを必死に訴えるようになった。その人物が藤の名を持つと知って、本人だと思った。ただ問題は僕とは学部が全く違うということだった。
 おかげで余計な講義も出ることになった。彼の友人である作島とサークルが同じだったことは大変有利に働いた。たとえ幽霊部員だったとしても、作島に気付いたのが一年後であったとしても、だ。
 それから暫くは観察である。どうやって話を切り出すか、仲良くなるか、考えた。しかしあまり意味はなかった。結局はその前にお紺が周りをうろつきすぎて、彼は悪夢を見るようになってしまった。それは現代社会に生きる僕らにとっては苦痛だろう。どういうものを実際見せたかはわからないが、お紺が伝えるとしたら火事と、そして藤吉自身の生きざまだ。あれはつらい。
 僕はその殺人現場に居合わせていない。それでも見えてしまった。お紺自身は見えていなくても藤吉自身の魂がそれを覚えているだろう。恨みつらみ、哀しみ、慟哭、藤吉の心。僕のせいだと思った。
 だからこそどうにか幸せになってもらいたいと思った。藤吉だけではなくて、お紺にもしっかりと逝く道を教えてあげたかった。
 前世で彼らは不幸だった。
 今世で彼らは幸せになるべきだ。
 
 次の講義に向けて早く教室に着くと、眠りに落ちたままの彼を発見した。僕は悪夢にうなされる彼の傍に立ち、手を差し出した。



後書きテンプレート

■作者名
恵陽

■サイト名&アドレス
月明かり太陽館

■参加ブロック、作品番号、作品タイトル、作品アドレス
D09 「焦げた着物の少女」

■ジャンル
前世引きずり系 現代話

■あらすじ
藤一郎は夜毎悪夢にうなされていた。そんな時、吉信に話しかけられる。だが彼には何か思うところがあるようで…。

■意気込みテンプレを使用された方は、URLを教えてください。
こちら

■推理をかわすための作戦は?
しておりません。だから何度か私の話を読んだ方は第一印象でこの話をあげておられた。お見事っす。

■作品のネタを思いついたきっかけは?
火と聞いて単純に火事と思った。その時、時代小説を読んでいたせいで時代物書きたいと思ったけれど、実際書こうとしたら書けなかったので転生ものになった。
もし時代ものになっていたらフェイクになったんだろうか。

■ストーリーの構築において気を使った点、苦労した点などあれば教えて下さい。
藤吉の妻を死なせるかどうかで悩んだのと、途中までしつこく時代物にしようと粘っていたので辰三と藤吉をどう動かそうか悩んでいた。もし時代物になってたら多分消化不良なミステリになっていたと思われる。

■削ったエピソードなどありましたか? 作成裏話歓迎です。
前の質問で答えてしまったが時代物にしようと思っておりました。
その場合は二人の男が放火の謎に迫るミステリに。
そういえば吉信の吉は別に藤吉からとったわけではないのです。紛らわしくてすみません。適当につけたらそうなってしまっただけ。
あと削ったんじゃなくて書かな過ぎて混乱させたようですみません。書く時に吉信の事情はなくていいかなと、まるごとスパッと抜いたのですがおかげでややこしくなってしまった。ごめんなさい。

■その作品の続編または長編化のご予定は?
ございません。

■その作品で気に入っている箇所はどこですか?
お紺の「やぁよ」かな。
冒頭とか全体的に暗いので自分で癒された。

■推理期間中、褒められた点は?
褒められた点ではないですが、冒頭が恐ろしいと言われたこと。最後和み話になったけど本当はホラーにしようかとも思っていたのでその片鱗がそこに。普段ホラーっぽいホラーを書かないのでびびってくれて嬉しいっす。

■推理されてみて、いかがでしたか?
思った以上にばらけていて前半笑いました。推理が進んで来たら常連さんにはものすごい勢いで当てられたけど。
玉蟲さんに突っ込まれた時に思わず反応してしまったのがまずかったかなあとも思いましたがどう見てもあれ、私そのままだからなあと諦めました。

■正解以外に、あなたの名前があがった作品はありましたか?
D04 D05 D06 D12
実際書けそうなのはD04以外かな。04はね、音楽関係だから無理なのである。親族にピアニストいるくせに私は音楽分野があまり得意ではないのだよ。歌を小道具として使うならまだしも楽器を持ち出されたら無理。

■あなたの作品の作者だと推理された方はいましたか?
耀華さんが多かったかな。
あと綾瀬さん。和さん。

■推理してみて、いかがでしたか?
あくまで勘推理です。難しくて勘推理も出来なかった今回。

■あなたの推理はどのくらいの正解率でしたか?
今回実は五人だけ勘で当てに行ったのですが、カホリさん、中原さん、enuさんは当てたのに冬木さんと玉蟲さんが逆だった…。まあ所詮勘ですけど逆だったというのがなんか口惜しい。

■この企画に参加して、改めて気づいたことはありますか?
タイトルって大事だなと思いました。正直タイトルはそのままでいいだろうとあれだったのですが、予想以上にDブロック馴染み過ぎてビビらせたみたいですみません。

■参加作品の中で印象深い作品をあげてください。
同ブロックだったD08かなあ。こういうの書きたいと思いました。
何故私も思いつかなかったのだ、と自分に嘆いた。

■参加作品の中で印象深いタイトルの作品をあげてください。
文句なしのA01かな。あれは自分には絶対出来ねえな。

■参加作品の中で面白かった3作品&一言感想、お願いします。

B03 <劇場>の魔女
かわいかった。自分がツンデレ好きなんだなという自覚はあるのだけど、女の子のツンデレは特に好きらしいと自覚した。たまらんかった。

F06 夕星☆えとらんぜ
なんかこれ結構好きだったんだ。なんだろう、なんかこう初々しいというか。勘違いから始まる恋でもいいんじゃないとか思ったよ。

G06 ファレと変な魔法使い
かわいすぎる。これは語りとあとライマの変化につきる。なんだあの憑き物が落ちた後、めっちゃめちゃ違うやんけ。すごいよかったです。

可愛い系で選んでみました。


以上あとがきテンプレでした。



■■■

 食堂でカツカレーを食べる藤一郎の見つけた。作島と一緒に居るようだ。
「横いい?」
 作島の隣が空いていたので訊くと、うどんをすすっていた彼が目をぱちぱちさせた後頷いた。
「吉信も昼か。次何?」
「講義はないけどゼミの課題しに図書館」
「へえ、もしかして卒論準備とか始まってんの? 大変だなあ」
 藤一郎も作島も経済学部だ。卒論はなくてもいいらしいと聞いて羨んだ覚えがある。
「さすがにまだだよ。ただ成績には反映されるからね。あんまり手を抜いてるとばれる」
「そっかあー。がんばってね」
 話が途切れたところで僕はから揚げ定食に手を伸ばす。熱々のご飯にから揚げ、幸せだ。
 かちゃんと音がして、顔を上げる。藤一郎がカツカレーを食べ終えたらしい。スプーンを置いて、口許を拭っていた。
「そういえば、あれから夢見はどう?」
 問うと、藤一郎は笑う。
「おう、もう全然見ない。何かよくわかんねえけど、あんときはサンキューな」
「え? 吉信なんかしたの?」
 実は先日ファミレスで夕飯を食べた後、会うのは一週間後だ。
「別に。何もしてないよ」
 作島が不思議そうにどんぶりから顔をのぞかせている。僕は首を横に振った。
「ほい」
 不意に藤一郎が五百三十円を差し出した。
「お。忘れてなかったか」
「馬鹿みたいに言うなよ。これくらい忘れない。こないだ結局おごってくれたんだよ。俺が小銭持ってなかったから」
 後半は作島に向けて放つ。
 作島は納得したらしい。
 それから他愛ない話を昼休み中して、解散した。
「またなー」
「おう」
 他愛ない。本当にどうでもいい話。
 二人と別れると、ホッと息を吐く。
 救われたのはお紺だけではない。僕もだ。
 藤一郎とは会えば挨拶をする、その程度だ。だけどそれでいい。僕は僕の道を真っ直ぐに歩いて行ける。もう生前に捕らわれることもない。
 藤一郎と出会えてよかった。
 お紺が待っていてくれてよかった。
 これで僕も解放された。



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